アザディスタン編・第12話と第13話の間を捏造した「大義と欺瞞」(2007冬コミ発行)の続きを書いています。以下お試しというか、冒頭部分サンプルです。
発行日は未定ですが、イベント売りの前に、2月中に通販の受付をしようと思います。
この話を片づけないと、別のビリグラが書けないので、イベントの予定が3月までないのですが、とにかくさっさと片づけておきたい……!

既刊「大義と欺瞞」を読んでいなくても大丈夫な程度の内容です〜。
ちなみに、2は、ビリグラ+アレハンドロな感じになる予定です。





++大義と欺瞞2(サンプル)++




砂漠の中に突如現れる滑走路。
普段は静かな砂漠地帯は、今は次々に飛来するMS群によって喧噪に包まれていた。

アザディスタン首都防衛の任務が一段落し、はた迷惑な国連大使の護衛の任務も完了した対ガンダム調査隊の面々が駐屯地に戻って来られたのは、出撃して五時間余りが経過してからだった。

ユニオン軍のアザディスタン派兵に際し、アザディスタン空軍基地の一部を無条件供与させてはいたが、全MSに格納庫があるわけではなく、岩と砂ばかりの大地に滑走路と付属施設があるだけの一軍の拠点としては粗末な物だった。
だが、ユニオン軍が駐留してからは次々に仮設基地が設営され、砂漠は戦争特有の妙な熱っぽさと緊迫感に満ちていた。

砂っぽい地面に黒い機体が降り立つと、それを待ち受けていた整備クルー達が駆け寄ってきた。

一足早く戻ってきていたハワードとダリルもまた、その黒い機体のパイロットの帰還を心待ちにしていた。カスタムフラッグと呼ばれるその機影は、ユニオン軍の最高軍事機密でもある。
今回のアザディスタン派兵の中核を成す部隊の指揮官機だった。

飛行形態のカスタムフラッグから降りたグラハムを待ち受けていた部下二人は、口々に戦闘の感想を聞きたがった。

「中尉、お疲れさまです。やっぱガンダム手強いですなぁ!」

「新しいガンダムの感触はどうでした!?」

長時間の哨戒任務で疲れてはいても、ガンダムの情報はそれを忘れさせるほどの魅力がある。
今回のアザディスタン内紛のように組織だった戦闘ではなく、テロや暴動が散発的に発生する都市部では、フラッグファイターも出番がない。しかも、慣れない護衛任務にも従事しなくてはならなかったため、最前線で戦う部隊のパイロットとしては、フラストレーションが溜まる五時間弱だった。
これなら敵MSと戦っていた方が、精神的に楽だと思えるほどに。

「俺たちに大人しく護衛してろってのは、正直きついですよねぇ」

ハワードがそうぼやきながら、パイロットスーツ姿のグラハムを見上げ、メットを外すのを待つ。
ハワードは、グラハムの戦闘直後のメットを外す瞬間が好きだった。くせのある金髪を揺らし、幾分上気した頬とガンダムについて熱っぽく語る瞳を晒すその一瞬が、共に戦う上官として以上に心を惹きつけてならないからだ。

建前はどうあれ、今回のユニオン軍の派兵がガンダムと戦うためだと理解していたハワードとダリルだったが、上層部の意向で首都防衛を優先しろと言われたことに不服を示さなかった。軍人としては当然のことだ。
ただ、不満が残るとすれば、国連大使の護衛の任だ。
あれは、どう考えても自分たちの任務ではなかった。

ハワードとダリルが後で聞いた話によると、大使が直々にグラハムを指名したらしい。
お偉方の我が儘はよくあることだが、この非常時に国連大使だからといって無理な要望を受け入れてしまう上層部も上層部だ。
ハワードも、はじめはグラハムが国連大使のアレハンドロ・コーナーと個人的に親しい間柄なのだろうかと思っていた。

だが、妙に腑に落ちない。
ガンダムとの戦闘後には上機嫌になるグラハムの表情や口調が妙に重かったからだ。
ホテルを出た直後の通信の時から、モニター越しのグラハムの様子がおかしかったことにハワードは気付いていた。

カスタムフラッグのコクピットから出てきたグラハムは、部下の言葉に応えることもなく、表情も分からないままだ。
現れるはずの金髪は見えず、いつまで経ってもメットを外す素振りを見せないグラハムにハワードは首を傾げた。
同じようにグラハムを待っているダリルは、ハワードの軽口に同感だと頷くだけで何も気付いていないようだ。

ハワードが違和感を覚え、わずかに眉を顰めた。
コクピットから降り立ったグラハムの足が地上に着いた途端、わずかに揺らいだような気がした。

「……中尉?」

気のせいかと思ったが、次の瞬間、歩き出そうとしたグラハムの身体がぐらりと傾いだ。

「中尉!?」
そのまま崩れ落ちるように倒れたグラハムの身体をハワードが驚いて抱き留めた。

「中尉!!」

メットをしたままでは、グラハムの表情がわからない。
すぐ傍らで同じように歩いていたダリルが慌てて手を貸して、グラハムの襟元のアジャスターを緩め、メットを外す。
ぐったりと身体を預けるグラハムの額にはびっしりと汗が浮かんでおり、青白い表情は月明かりのせいだけではないだろう。

現場に一気に緊張した空気が満ち、慌ただしくスタッフが駆け寄ってきた。

「救護班!ストレッチャーだ!早く!」
「やはり12Gはパイロットに負担がかかりすぎるんじゃないか!?」
「テストの時は問題なかっただろう!」
「頭を動かすな! そのまま横に」

整備班や救護班の者たちが口々に叫ぶ。

「しっかりしてください! エーカー中尉!」

「だ……」
大丈夫だ、と言おうとしたグラハムの声は言葉にならず、手を挙げて応えようとした腕は動かず、地に落ちた。

視界が急激に暗く狭くなったグラハムは、遠のく意識の中、ちょうど駆けつけたばかりの技術顧問が、人垣の向こうで蒼白な顔で立ち尽くす姿を見た気がした。


「ち……がう」


苦しげに眉を寄せたグラハムの口から洩れたかすかな呟きを聞き咎めたダリルが、呼びかけたがグラハムの意識は深い闇の底に落ちていった。





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