| +虫の音+ 虫の音が聞こえる。 窓の外は秋の風情だ。庭の萩が風に揺れていた。 アデスは、ようやく寝付いた人を起こさないように、静かにベッドから立ち上がった。 慣れた仕草で素早く浴衣を羽織り、帯を締める。 まだ夜は長い。共にいられる時間も………。 だが、朝が来れば二人の関係はただの上官と部下に戻る。 それを知っているから、時を惜しむように抱き合い、疲れて眠りについた。 それでも、数時間で目が覚めてしまうのは、戦艦という特殊な環境下での任務ローテーションに慣れてしまったせいだろうか。 窓からの月明かりのせいか、部屋は薄青く染まり、アデスはベッドの脇に腰掛けて、青い光に照らされた彼の横顔を愛おしそうに眺めた。 先ほどまで熱く火照っていた肌は、窓から流れ込む涼やかな外気にさらされて、冷たさを取り戻している。 まだ夢の中なのだろう。乱れた髪がシーツに散り、肌掛けかわりの浴衣から覗く白い肌が、時折ふるりと震えた。身じろぎに合わせて、金色の髪が肌を滑り、白いシーツの波に落ちる。 群青色の布地に濃紺の染め抜きがされた浴衣は、青白い光の中で更に青さを増して見えた。 彼の素肌を覆う群青と、白い肌、そして緩くうねる金髪との対比が鮮烈な印象を与え、アデスはただ心から美しいと感じた。 眠る人は、伏せられた瞼と冴え冴えとした美貌と相まって、一種の近寄りがたさを醸し出していた。 アデスには、指先や唇に残るぬくもりがなければ、つい先ほどまで、この美しい人が自分の腕の中にいたとは信じられないほどだ。 ふと、その人は肌寒さを感じたのか、隣にいたはずの男のぬくもりを求めるように手を伸ばした。 アデスがベッドを抜け出してからまだそれほど経っていなかったので、ぬくもりが残っていたのだろう。無意識にシーツに指を這わせて、何かを探すような彼の仕草に、アデスは思わず手を伸ばした。 普段は白い手袋に隠された彼の長い指にアデスは自分の指を絡め、手を握る。 冷えてしまった彼の指先を温めるようにやさしく包み込んだ。 彼の唇がかすかに開き、呼吸がほっと和らぐ。 寝息のようなかすかな吐息を感じ、アデスの頬が緩んだ。 長い間じっと見つめていても、彼が目覚める気配はない。 ほんの少し開かれた窓から入る夜風が、だいぶ冷たくなっていていた。 アデスは、窓を閉めるために立ち上がろうとした――― ――が。 握られた手がほどけない。 無理に離せば、起きてしまいそうだった。 彼は寒いのか、猫のように身体を丸めている。 男の手に頬をすり寄せるようにして離れようとしない姿に苦笑したアデスは、仕方なく再びベッドにもぐりこみ、素肌のラウを抱き寄せた。 窓の外から聞こえる虫の音が心に染み渡るように響く。 その声が彼の眠りを妨げるものではないことに安堵した。 額が触れ合うほどに顔を近づけても、目を覚まさない。 そのことをどこか嬉しく感じながらアデスもまた眠りに就いた。 彼の穏やかな寝息が、朝まで続くことを祈りながら……………。 ◇ 一晩中、開けたままになってしまった窓から、まぶしい光が差し込む。 朝、いつものようにラウより先に起きたアデスは、静かにベッドを抜け出した。 乱れた浴衣を手早く直し、朝食の支度をしようとベッドから離れた時だった。 「…アデス………」 自分の名前を呼ばれて、振り返ったアデスが目にしたのは――――― |

アデスのため息
最後の最後でギャグになっていまいました(笑)。
浴衣のいろいろな利用方法。
その2:寝間着
アデスの顔が変です。(ゴメン!)
軍帽がないとアデスに見えないのは、どにの画力不足です(アワワ…)