熱い。

身体が燃えるようだ。


いや、燃えているのは自分の周囲だ。

目の前が紅い。
炎の紅だ。

熱い。いや、寒い。
なぜ、こんなに冷たいのだ。

目の前に見えていた炎は、もはや瞼の向こうに隠れ、
紅い色だけが知覚できた。

炎?こんな近くに?

なのになぜ、自分はこんなに寒いのだ。

血が凍っていくような感覚。
いや、感覚などありはしない。


死ぬのだ。私は。



あの人を残して―――。

あの人の力になることすらできないまま―――。





感覚が麻痺していく。
瞼の紅はいつのまにか暗くなり、闇へと変わった。



闇。







アデスの意識はそこで途切れた。











C.E.71 7月12日

―――――ヴェサリウスは炎に包まれた。























パトリック・ザラが死んだ。

ジェネシスは崩壊。
アイリーン・カナーバを中心とする穏健派が、暫定評議会を設置。声明を出す。


そして―――――停戦へ。





ザフト・連合ともに多数の戦死者を出し、第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦は終結した。



















もしもBOX 完全版 〜Side Ades〜








一年以上に及ぶプラントと地球連合との戦いが終結した。
人々は、戦争に疲弊し、新たな戦後に明るい光を望んでいた。

戦後処理の一環として、プラント暫定評議会は、大規模な組織改革を行った。
その中で、急進派だった議員の多くは更迭されるか、辞職した。
暫定政権によるユニウス条約の締結は、互いの国力に応じた軍備制限を基本として、ようやく調印がなされた。
しかし、連合、プラント双方に条約の内容について多くの不満が残された結果、プラントではアイリーン・カナーバをはじめとする暫定評議会が総辞職し、新たに評議会選挙が行われ、議会開会初日に議長が選出された。
プラント最高評議会議長に選出されたのは、ギルバート・デュランダル。
終戦から半年経ってようやくプラントは、新たな未来へと歩み始めた。

その後、組織改革はザフト軍内にも及び、国防委員長の専制ができなくなった反面、プラント建国の立役者であったザラが死亡したことで、ザフト軍内にも大小の派閥ができるようになった。
早くも新しい指導者を巡って派閥争いが起こる。
軍内でも比較的平和路線で知られた人物と、ザラの派閥をそっくり受け継いだ人物の争い。

再建が必要な時期にザフト内が分裂するという最悪の事態を目前にして、両者の争いに終止符を打ったのは、新議長に就任したばかりのギルバート・デュランダルだった。

ギルバートはザフトの急進派を抑えることに成功し、平和路線主義者からの支持も厚い。
戦犯としての処分を決定する軍事法廷が開廷されたが、デュランダル議長の演説により、いかなる兵も罪を問われることなく閉廷。
その結果、ザフトの一般軍人に更迭・除隊させられた者はいなかったが、例外として、最後までザラに従っていた官僚や軍人は新体制から排除されることになった。
それは、対外的には自主退役や辞任といった形で水面下においてゆっくりと行われた。

その最たる人物ラウ・ル・クルーゼも生存していれば真っ先に処分の対象となっていたはずだった。



生存していれば……。









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