
花霞にかき消されそうな彼の姿を無理矢理ここに留め、
かすかに洩れる吐息も全て奪いつくすように口づけた。
彼のすべてをここにつなぎ止めたくて。
仰のいた彼の顔は、月明かりのせいか青白く、
この手で触れていなければ、
確かに腕の中にあるとは信じられないほど非現実的だった。
震えた。
彼を抱く腕が。
触れていることが信じられなくて、触れられたことが嬉しくて
胸を締め付けられるような一抹の不安に気付きたくなくて
背にしがみつく彼の手に力が入る。
そのことが唯一信じられる確かな重みだった。