++雪の日++


ここ数日、降り続けた雪は、今日になって更に激しく降り積もっていた。
インターホンの音に、待ち人がやって来たと知り、ビリーは玄関ドアを開けた。

「うわ、君どこ行ってたの?そんな雪まみれで」

目の前に立つ人物は、ダウンコートにマフラー姿だが、上から下まで真っ白だ。

「……寒冷地演習だ」

憮然と答えたグラハムは、カタカタと小刻みに震えている。室内の暖かな空気に触れてすぐに溶け始めた雪が滴となって足下に落ちた。

「演習ってMSで、じゃなかったのかい?」

「……いや、演習に問題はなかったんだが、ここに来るまでの道路が雪で封鎖されていて……歩いてきた」

「えっ!この雪の中、あの距離を、徒歩で!? さすがMSWADのトップファイターは体力がちがう」

言いながらビリーは、グラハムの頭や肩に降り積もった雪を払いのける。

「じゃあ、市内は交通麻痺だね。大変だ」

人ごとのように呟いて、グラハムを室内に招き入れた。コートを脱いで、濡れたマフラーを外したグラハムの頬にビリーは手を伸ばす。氷のように冷えきった頬に手のひらを当てると、相手が驚いたように一瞬、身構えるのが分かった。

「おい……」
「こんなに冷え切って―――風邪引くよ。バスタブにお湯ためるからちょっと待ってて」

抗議の言葉を無視して、ビリーが慌ただしくバスルームへ向かった。






グラハムが、バスから出てきた時、ビリーはコーヒーカップを片手にパソコンに向かっていた。
頭からタオルをかぶったグラハムが、濡れた髪を拭いながら、ビリーの背後から画面を覗く。

「なんだ?」

「んー? フラッグのカスタマイズ案。今度、上申しようかと思って。―――温まった?」

バスから出てくるタイミングを見計らって淹れておいたコーヒーをグラハムに渡す。

「ああ、こんなことなら基地に泊まればよかったな。凍死するかと思ったぞ」

「無理することなかったのに。どうせ、明日からまたフラッグのテストだから、基地で会えただろう?」

MS開発の技術顧問であるビリーは、研究機関からの出向扱いとなっているので、準軍属扱いだが、グラハムは正規軍人だ。兵舎は軍基地の近くにあり、本来なら買い物も基地周辺ですべて済んでしまうのだが、ビリーが基地外に部屋をとっているので勤務時間外で会うならどちらかの宿舎に行かなければならない。

「お前が、一人の誕生日は嫌だとか言ったからわざわざこの悪天候の中、来てやったのに」

「あはは、ゴメン、ゴメン。感謝してます」

「―――まあ、そういうワケだから手ぶらで悪いな。どこにも寄る余裕はなかった」

「いいよ、来てくれただけで嬉しいよ。それより、どうする? この天気じゃ、帰るの大変だよねぇ」

ビリーが振り向いて、にこりと笑う。
その表情を見たグラハムがしばらく沈黙した後、憮然として言った。

「―――泊めてくれ」

「了解」


ビリーがグラハムの手からコーヒーカップを取り上げた。


グラハムは仕方がないといった風情で身を屈めると、ビリーの襟元を乱暴に掴み、噛みつくように口づけた。









「あれ? 携帯鳴ってる……?」

ベッドの脇に置かれたグラハムの携帯が鳴った。そのまま無視しているとしばらくコールした後に切れ、二、三分後に再びコール音が鳴る。

「これは、ひょっとして緊急かな?」

グラハムは、シャワーを浴びに行ってしまったのでここにはいない。携帯を取り上げ、少し迷ったが、画面表示を見れば基地からだ。ビリーは、そのまま通話ボタンを押す。

「はい、MSWAD技術顧問のビリー・カタギリです」

『え? あ!? あの、失礼しました。グラハム・エーカー中尉の番号と間違えました!』

「いや、この番号で合っているよ。彼は今、出られないので私が代わりに出てしまったんだ。まぎらわしくすまないね。私でよかったら伝えるけど、用件は?」

相手の戸惑いも無理はないと思い、一応理由を言って詫びる。

『お二人ご一緒ならちょうどよかった。アラスカ方面第三分団基地通信指令部です。グラハム・エーカー中尉とビリー・カタギリ技術顧問に非常招集です。至急基地まで出頭願います』

雪の中、2時間も歩いてようやく帰り着いたのにまたとんぼ返りとは気の毒に……と心の中でグラハムに同情し、ふと、今度は他人ごとではないことに気付く。

「了解しました―――と言いたいところなんですけど、この大雪で市内の交通網は寸断されて、身動きがとれない状況でして」

受話器の向こうでしばらく間があった、上司に判断を仰いでいるようだ。

『―――わかりました、天候が回復次第、すぐに迎えのヘリを向かわせます。それまで、ご自宅で待機していてください』

「わかりました。あ、エーカー中尉も私の宿舎にいますので、来れるようになったら連絡入れてください。この番号でいいので」

『了解しました』

電話が切れた後、ビリーはベッドから起きあがって、コーヒーを淹れにキッチンへ行く。
カップを二つ用意しながら溜息をついた。

「……さて、MSWADの女王様のご機嫌をどうやってとろうかな」











こう……なんというか、ヤマもオチも意味もなくいちゃいちゃしている二人がひたすら書きたかったんですが、「だからどうした?」というツッコミをされそうで……(汗)。
エロは一応、すっ飛ばしましたが、そのうち書きたくなるかも。
なんか、この二人は、やることヤッてんのは分かっているので、別に今は書かなくてもいいか……と言う気持ちになってくる。じゃれ合っている二人が好きなんだな、きっと!(うん)



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