| 【R-18】 ◇Side:A ベッドに押し倒してもグラハムは抗わなかった。 だが、心ここにあらずという表情で、視線すらまともに合わせようとしない。 恥じらっているわけではなく、ただ漠然と行為を受け入れているだけのようにも思えたが、それは初めのうちだけだった。 快楽に慣れたグラハムの身体は、アレハンドロの愛撫に敏感に反応を示した。 深いグリーンアイズを濡らして、身体を快感に震わせて、それでも何かを堪えようとするグラハムの姿にアレハンドロは隠微に微笑む。 罪悪感でいっぱいなのに、グラハムの心と身体は飢えていて、かわいそうなくらいだ。 やさしい愛撫と言葉で彼の心が慰められるかどうか分からないが、カタギリのところへ行くのではなく、自分のところに来たという事実がアレハンドロを満足させた。 「罪悪感でいっぱいの君の身体は、ひどく扇情的だ。自分で意識していないのに、後ろめたさが僅かな仕草を媚態に思わせる」 アレハンドロが頬から首筋を手で辿り、指先で耳の裏を探るようにすれば震えるように反応を返した。 突き放して、冷たい言葉と態度で彼を貶めるのも楽しいが、時には傷ついた心を撫でてやるのも面白い。それによって揺れる心を見ている時だけが、自分もまだ人並みに『感傷』という愚かな感情に浸れる甘さがあることを思い出すからだ。 「逃避するために欲に溺れる姿もいいね。お高くとまってセックスなんて知りませんという聖人君主面をした人間よりもよほど親近感がもてるよ」 繋がった時の押し殺した悲鳴は、何度聞いても良い声だと思った。 身体の奥まで貫かれ、揺さぶられて与えられた快楽に溺れながらも葛藤する姿は、アレハンドロをひどく昂らせた。 きっと、彼は後悔するだろう。 この一夜の行為に対して罪悪感を抱き続けるだろう。 そうして、罪と欲にまみれた彼の姿は、きっと美しいだろう。 アレハンドロは満足そうに微笑むと、グラハムの甘い吐息を唇で塞いだ。 ◇Side:G ベッドが二人分の体重を受けて軋む。 真っ白なシーツの波に金糸と幾分上気した肌が沈んでいた。 この日のアレハンドロの行為に荒々しさは一切なかった。 服を脱がされる時も、口づけされている時も、整った爪が胸の突起を弾く時も―――。 繋がった時の痛みに声を上げれば、耳元で何事か甘く囁かれ、ゆるりと揺さぶられた。 身体の奥から生まれた熱はグラハムの身体を徐々に蝕んでいき、期待していた通り、苦痛は甘い疼きに変わる。 労られている―――という意識が確かにグラハムにはあった。 そして、自分がそれを望み、この状況に甘えていることも。 どうしても誰かの体温が欲しくなる時がある。 たまたま、都合の良い場所にアレハンドロがいただけだ。この男との行為に身体の上を満たす以上の意味はないはずだった。 それなのに、確かに心の隙間が満たされていく。 グラハムにとっては、ただ緩慢に頂上を目指すだけの道のりだったはずが、いつしか自分からアレハンドロを求め始めていた。 それが、更にグラハム自身を苦しめる。 自分の肌の上を辿る手がどうしてカタギリのものではないのだろう……。 自分の髪を優しく梳いてこめかみに口づけを与えるこの唇が、どうして『彼』のものでないのだろう。 グラハムは、縋るように男の背に腕を回しながら、答えの出ない自問を繰り返していた。 終 何の解決もしていませんが、グラハムが可哀想になってきたので、もういい加減やめておこうと思います。「やさしい」波風と言いながら、普通の波風よりも余程こちらの方がグラハムを追い詰めていることに気付きました……。 back |