結局、その後、二人は店で飲み直す気にならなくて、ダリルの部屋へ行くことになった。 途中、ビールやワインを買い込んでは来たものの、玄関のドアが閉まった途端、飲み直すという目的はどこかへ飛んでしまっていた。 グラハムは、自分よりも大きな身体を壁に押し付けて、背伸びするようにダリルの唇を奪う。 「先ほどの続きだ」 グラハムが嫣然と微笑む。 普段見せる表情とはまったく違うその顔にダリルの身体がカッと熱くなる。 子供のような無邪気な笑顔と、部下達に見せる精悍で爽やかな微笑、困難な任務に立ち向かう時の自信に満ちた男の笑み、敵を前にして自然と浮かべる獰猛な笑み――ダリルはこれまでグラハムの様々な表情を見て来た。だが、その中でも、今の微笑は強烈なインパクトで男の精神を揺さぶった。 ダリルは一瞬目を細め、ごくりと喉を鳴らすと、何も言わずグラハムの頬に手を伸ばした。 親指の腹で頬から瞼を撫で、人差し指で彼の唇に触れる。 グラハムはダリルの指先を舌先で舐め、甘噛した。 その姿に理性保っていられる者などいないだろう。 ダリルの手から酒の缶が入った袋が床に落ちてゴトンと重い音を立てた。ワインの瓶は割れてしまったかも知れないが、そんなことはもうどうでもよかった。 ダリルは、荒々しくグラハムの腰を抱き寄せ、貪るように深く口付けた。舌が絡む湿った音と、荒くなる息遣いが続く。角度を変えながらの長い口付けにグラハムは小さく震えた。 「ん……ふ」 ダリルの頭を掻き抱くように伸ばされたグラハムの手が男の髪に触れる。髪の間に指を差し入れ、掻き乱した。 ダリルは髪が乱れるのを気にも止めず、グラハムの耳元から首筋をたどるように口付けを繰り返した。 触れた唇の熱さと、柔らかさ。彼の囁くような甘い響きが耳に残る。 「ダリルッ…」 唇が綴る言葉を遮るかのように口づけた。 柔らかな感触を楽しむように更に弄び、慣れた手つきでグラハムの服を脱がしていく。シャツの裾から忍び込ませた手がグラハムの胸の突起を探り当て、つまんだり捏ねたりを繰り返せば、赤く色づいて、ぷくりと立ち上がってくる。 いつまでも玄関先で前戯を続けるわけにもいかない。ダリルは、熱い息でグラハムの耳元に囁きかけた。 「ベッドに行きましょうや」 ダリルを見つめるグリーンアイズは、これから訪れるであろう悦楽のひとときを期待し、情欲に潤んでいた。 ベッドの上で大きく脚を開かされ、中心を温かい粘膜に包まれてグラハムが息を呑んだ。 ダリルが舌でグラハムの中心を愛撫する。先端から滲む透明な液体を舐め取り、舌を茎に這わせ甘く歯を立てる。 「うぁっ……歯をたてるなっ……!」 グラハムの身体が怯えたようにビクリと跳ね、徐々に息が上がっていく。ダリルは濡れた音をわざと響かせるように舌を使い、上目遣いにグラハムの顔を覗き込んだ。 「……ハ……ァ」 ダリルの髪をグラハムが掴み、視線だけでその先を促す。 屹立をすべて口腔内に飲み込み、喉の奥を使って刺激を与え続けた。先端だけを口に含み吸い上げるようにすると、ぶるりとグラハムの身体が震えた。 「あんっ……!」 強烈な刺激にグラハムが悲鳴を上げた。 与えられた快感を逃すまいとして弾力のある白い内股がダリルの頬を両側から挟み込む。その仕草が更なる快楽を求めているようで、ダリルは吐精を促すために強く吸い上げた。 「くぅ……ん」 鼻に掛かった甘い呻きと共に、熱い迸りがダリルの口内に吐き出された。 躊躇わずに嚥下しようとしたダリルの口をグラハムが指でこじ開ける。 「たいちょ……う?」 「……ちょっと寄こせ」 トロリとした粘液が男の唇から垂れ、グラハムの手の平を汚す。 精液を受け止めたその手をダリルの昴ぶりに伸ばし、自分が吐き出したものを塗りつけながら上下に扱き鍛え上げる。 「く……」 指の動きに思わず鼻を鳴らしてダリルが呻くと、ぬるぬると滑った手で掴まれ、擦られた男根はすぐに硬くなった。 同時にダリルが、濡らした指でグラハムの後庭を探り、中指を蕾につぷりと差し入れた。 「あ……ぅ…ん!」 思わず洩れた自分の声にグラハムが頬を赤らめた。 「声……もっと聞かせてください」 グラハムの声にダリルが気をよくして、潤滑油代わりの精液を内壁に塗りつけるように中指を出入りさせる。 「ぅ…んん! は…ぁっ、気持ちいい……」 擦り上げられることで内壁は熱く熟れ、もどかしいような痛痒感に苛まれる。 グラハムは、ふるふると首を振って堪えようとするが、それは媚態にしか見えず、ダリルの指の動きは激しくなる。 「…もう、トロトロだ。だいぶ、いい感じですぜ? これなら俺のもスルリと入っちまいそうだ」 卑猥な言葉でグラハムを煽る。 グラハムはダリルを軽く睨んだが、艶を帯びた視線とかすれた喘ぎは、相手を増長させるものでしかない。 急に増やした指を根本まで挿し入れられて、グラハムの身体が強ばる。 それはそのまま、男の指を強く締め付けることになった。 「ああ、ここがいいんですね?」 グラハムが敏感に反応する場所を執拗に責める。 「ああっ……! ふざけてないで、早く…」 グラハムが吐息を荒げてダリルを詰る。 だが、指を動かせば、グラハムの肉襞はすぐに柔らかくなった。 「すげ……また柔らかくなっちまいましたよ。アルコールのせいですかねぇ」 グラハムの後庭を指で慣らしながらダリルが耳元で囁く。 「そんなことっ……お前のせいに決まっている……!」 ベッドの上のダリルに跨ったグラハムが身を捩る。柔らかくなった蕾を指先と爪で玩びながら、ダリルがグラハムの耳朶を唇でやわやわと喰む。耳の後ろに走った甘い痺れにグラハムが身を震わせた。 既に一度、男の咥内で達したグラハムの昴ぶりは再び勃ち上がり始めている。ダリルは片手で秘奥を弄りながら、もう一方の濡れた手でグラハムと自身を摺り合わせるようにして、お互いの快感を高める。 「アアッ……おかしくなるっ!」 強い刺激に堪えきれないのかグラハムが悲鳴を上げた。 蕾を侵す男の指が更に増やされて、指の腹で内壁を擦るようにして抜き差しを繰り返した。 準備が整ったと判断したダリルが、指を抜いてグラハムの尻たぶを割り広げるように掴み、腰を持ち上げた。グラハムがダリルの意図を察し、硬くそそり立った男の剛直に手を添えて蕾の場所へ誘導する。 「ふ……っ」 場所が定まり、男根の切っ先と菊座が触れ合った瞬間、ぐちゅりと音がした。お互いの部分が濡れているために滑りが良いはずだが、それでも挿入時の苦痛がなくなることはない。 「あ………ぅ」 「く……っ」 きつすぎる締め付けに思わず同時に呻く。 「食いちぎられちまう……! 少し、力抜いてくれませんかね」 「むり…だ。……お前のが……でかすぎるんだ!」 詰るグラハムにニヤリと唇を歪めて、ダリルは腰を更に突き入れた。 「ひぅっん…!」 限界まで拓かされた身体が軋む。まるでギシギシと音がするような錯覚にグラハムはきつく目を閉じ、背を仰け反らせた。抗議のつもりでダリルのドレッドヘアを強く引っ張った。 「無理だと言っている!」 「大丈夫ですって」 ダリルは自身の乾いた唇を舌で濡らし、宥めるようにグラハムの唇をペロリと舐めた。それが呼び水になったのか、グラハムの方から口づけを求める。 「ん……ふ」 くぐもった声を上げるグラハムの腰を揺すり上げた。滑りの良くなったグラハムの内壁はぬるりと男のものを呑み込んでしまう。言葉よりも身体の方がよほど素直なようだ。 「や……んんっ! ダリルッ、ダリル!」 こんなに大きく拓かされたことはないせいか、この後どうなってしまうのかという不安が一瞬よぎり、グラハムは男にしがみつき、盛んに名を呼ぶ。 何度も自分の名を呼ばれてダリルの熱が下肢に集中する。 「中に…出したいんですが、いいですかね?」 グラハムは男にすがりついたまま無言で何度も頷く。その仕草が可愛くて、ダリルは、凝った熱をグラハムの中に思い切り吐き出した。 ドクドクと注ぎ込まれた熱に頭の奥まで痺れているような感じがして、グラハムは、騎乗位のままで襲い来る圧倒的な快楽の波に身体を委ねていた。 ダリルは、陶然としたグラハムの身体をゆっくりとシーツの上に押し倒した。 抜かずに二度達したダリルの熱は冷めることがなく、自分でも呆れるほどグラハムの身体に溺れていた。 再び腰を押しつけると、グラハムの弛緩した身体に再び熱が籠もる。 「あ、はぁ…は……んんっ」 上から覆い被さるようにして腰の律動を早めると、グラハムの口から感じ入ったよう甘い声が上がり、男の身体の下で身じろぎする。 グラハムの最奥にたっぷりと精を吐き出したダリルは、自身を抜こうとしたがそれは叶わなかった。グラハムが、内壁に力を入れて阻んだからだ。 「抜くな……んぅ」 ダリルの腰に両脚を絡めて逃すまいとする仕草が、淫らで艶めいてどうしようもなく男を昂奮させた。大きすぎる男根を貪欲に呑み込み、苦しげに眉を寄せ、浅く息を継ぎながらも、蠕動する内壁はダリルを絶妙な加減で刺激し続ける。 「奥……もっと突いてくれ」 猫のように切れ上がった眦が生理的な涙で潤み、口から紡がれる喘ぎは熱い吐息のまま途切れることはない。 言われるままに腰を大きくグラインドさせると、周囲にはばかることなくグラハムの嬌声が響いた。 「アッ……アア…ッ! ダリ…ル!」 視線で誘い、言葉で煽り、身体で高ぶらせる。 これが無意識の媚態だというなら、まるで天性の娼婦だ。 グラハムの指にダリルの指が絡み、手の平を合わせてシーツに縫い付ける。仰け反らせた白い喉にダリルが舌を這わせた。それだけでグラハムの背筋には震えが走り、絶頂に達してしまう。 「こんな……こと」 大きく喘ぎながら、呆然とグラハムは呟く。 羞恥に色づく肌をダリルは見下ろし、匂い立つようなグラハムの色香に酔った。 あの路地裏で颯爽と女性を助け、破落戸相手に気持ちよいほどの啖呵を切った人間が、これほど快楽に溺れやすい身体だとは誰も思うまい。 MSWADのエースとして、パイロットなら誰もが目標とする高みにいる人物が、今だけは自分のためだけに身体を開いている。 目眩がするほど満ち足りた気持ちになったダリルは、グラハムに覆い被さるように抱きしめ、肩口に顔を埋めた。 汗とアルコールの匂いに混じって、かすかに感じる甘い香りがダリルの頭を痺れさせているようだった。 酩酊状態に近い感覚は、アルコールによるものか、それとも――? 『酩酊』 2008.06.01 喘がせすぎです。反省しています。 でも、ハムにあんあん言わせたかったんだよ! |