| ++ 准尉と曹長の受難 ++ ハワード・メイスン准尉とダリル・ダッチ曹長が、栄えあるガンダム調査隊に異動を命じられてから1週間。 配属されて間もない二人は、今までの所属部隊では経験することのなかった奇妙な感覚に囚われていた。 上官であるエーカー中尉は、MSWADのトップファイターとして名を知られた人物であり、二人とも彼と共に戦えることを心から喜んでいたし、世界が注目するガンダムを追跡・調査する部隊に配属されたことを誇りに思っている。さぞ、毎日が緊迫感と充実感、そして達成感に満ちた職場なのだと思っていた。実際、それは間違いではなかったし、配属後すぐにタリビアでの紛争介入したガンダムと交戦する機会にも恵まれた。 ただし、自分たちが現場に到着したときは、すべてが終わっていたが……。 部隊へ帰投後、すぐに戦闘データの分析が行われ、二人も意見を述べたりして、技術顧問のビリー・カタギリとエーカー中尉と討議を行った。 驚くべきは、中尉と技術顧問の知識の広さだ。 技術顧問がMSの性能や科学技術に精通しているのは当然のこととして、エーカー中尉はパイロットでありながら自分でMSの整備も行えるのではないかというくらい自分の機体に対する見識が深い。 パイロットも自分の機体に対して、構造や性能などある程度の知識は必要とされるが、彼ほど詳しくは把握していなかった。 そして、上官と技術顧問のガンダムに対する熱の入れ方は、なんというか………子供がおもちゃに熱中するというか、手の届かない恋人を追いかけるような……そんな感じなのだ。 ガンダムは世界に対しての驚異であり「おもちゃ」や「恋人」に喩えるのは不謹慎なのかも知れない。 だが、それ以上に言いようがないのだ。 おかげで、この調査隊は、生死をかけた殺伐とした戦場という空気とはかけ離れており、記録に挑むアスリートとそのトレーナー的な雰囲気があった。 そして、更に問題なのは―――――二人が時折感じる疎外感、いや――――いたたまれない感じがすることだ。 (なんだ……この空気は………) 二人が同じことを思ったのも無理はない。 エーカー中尉とカタギリ技術顧問の仲の良さは異常だ。 同じ趣向のマニアが揃うとこんな感じなのかも知れない。会話一つとっても、意思の疎通が極めて良好で、いや、良好というレベルではない。 「あれ」「それ」「これ」という指示語だけで会話が成り立つような関係だ。 まるで長年連れ添った老夫婦のようだ。 そして、二人の間には常に笑顔が絶えない。 (なんていうか………ツーカーというか、他人が入り込む余地がないというか……) エーカー中尉に憧れる女性兵士たちが多いのは知っている。 これだけ、見た目良し、学歴良し、軍でも出世の有望株なら彼の恋人の座を虎視眈々と狙う女豹たちの武勇伝が伝わってきてもよさそうなのに、なぜか恋人の噂や、デートに誘われたというような話を聞いたことがない。 その理由の一端が、目の前の人物だということに二人は遅ればせながら気付いた。 二人は顔を見合わせた。 (ひょっとして、中尉は気付いていない……?) (……天然か!?) 中尉を見る技術顧問の目は、端で見ているこちらの方が照れてしまうくらいなのに、一番近くにいる―――というかその視線の先に必ずいる人物は、全く気付いていないようだ。 (物好きな……) (いや、どちらかと言うと技術顧問が気の毒だと思います…) ひそひそと囁き合う二人の不穏な空気を察したのか、カタギリがくるりと振り向いた。 「どうかしたかい?」 「い、いえ! なんでもありません」 「そう? フラッグの調整で気が付いたことがあったら、なんでも言ってくれよ」 優しげな口調の割に目が笑っていない。『手を出したらどうなるか………分かっているね?』と言わんばかりの視線の圧力を感じた。 二人は、グラハムに余計なことを言おうものならどうなるか想像し、空恐ろしく思った。 パイロットが命を預けるMSの整備を取り仕切る技術顧問を敵に回しては決していけない。それは、二人がパイロットとして培ってきた経験による教訓だった。 「は! こちらこそ、よろしくお願いします!」 二人は、思わず姿勢を正し、顔を引きつらせながら敬礼した。 END 周囲から見たビリグラのラブラブっぷりには、迷惑以外の何ものでもない感じですねv ビリーは裏表ありそうな感じだなぁと思っています。 back |