吐息と甘いささやき【裏】







議長一行を乗せたヴェサリウスは順調に航海を続けていた。
プラントの首都アプリリウスまであと五時間ほどだ。
先ほどまでブリッジにいた議長は、護衛として随行したレイに案内され、隊長室へ向かった。
到着まで休息をとっている頃だろう。

ブリッジには、クルーの他、隊長であるクルーゼと、艦長のアデスが残っていた。
皆、どこか疲れた顔をしているのは、精神的なものによるのだろう。クルーたちの気疲れは、自国の最高指導者が急遽移乗してきたことによる緊張感からだったが、アデスは、いろいろ振り回されたり心配したりした結果の心労だった。

「結局、お休みになっていないでしょう? ブリッジには私がおりますので休んでください」

「そうだな、そうさせてもらおう」

議長の来襲で休息を取り損なったクルーゼは、アデスの言葉に素直に頷いた。

「三時間ほど仮眠をとる。何かあったら起こしてくれ」

隊長室はギルバートに貸してしまったので、艦長室へ行くことになる。
いつものように艦長席の背後で身体を浮かせるように立つクルーゼが、身を屈めてアデスの耳元で囁いた。

「……お前のベッドで、お前の匂いに包まれて眠るというのも一興だ」

思いがけず熱い吐息を耳に感じてしまい、アデスが焦る。
周囲を何気なく見渡したが、クルーゼの言葉が聞こえたクルーはいなかったようだ。

(こんな場所で何てことを言うんですか、あなたは……)

アデスは内心動揺しながらも少し非難めいた眼差しを背後の人に向けた。
クルーゼは口角を上げてにやりと笑うとクルーの一人に命じた。

「航海長、艦長と話がある。後を頼む」

「は!」

それを傍で聞いてアデスが、「え?」という顔をしたが、クルーゼは有無を言わさずアデスを艦長室へ連行した。







アデスに艦長室のドアロックを解除させたクルーゼは、背後で扉が閉まった途端、アデスの手に指を絡めた。そのままもたれかかるように男の胸に顔を埋めた。

「お疲れですね…」

アデスはクルーゼの背中へ手を回し両手でやさしく抱きしめた。
クルーゼが目を閉じて身体の力を抜く。アデスの胸に頬を押し当てていると、心音と共に体温が感じられた。
ほっとため息をついたクルーゼの髪に口づけたアデスは、労るように背中を撫でてやる。

「ゆっくり休んでください……」

そう耳元で囁くと、掠めるような口づけを頬から耳元に落とす。
その感触がくすぐったいのか、クルーゼが口元を緩めた。胸に預けていた顔を上げ、アデスの耳へ唇を寄せた。

「お前が満たしてくれるのだろう?」

「……っ、聞いていたんですか!?」

急に照れくさくなったアデスが唇を離す。

「あの後………レイにな」

ふふっと笑うクルーゼの頤に手を掛けて、アデスは照れ隠しに口づけた。

















照明が落とされた艦長室。
壁際には、絡み合う二人の人影。
室内を満たすのは熱く熟れた気配。

身体を労りながらクルーゼに前戯を施し、声に甘い響きが混じるようになると、濡れた後口を押し広げるようにして男が侵入を果たした。
抱え上げられた片足がひくりと震え、クルーゼはすがるようにアデスの背に手を回した。

「う……んんっ……」

下衣はすでに打ち捨てられており、制服の上着を着たまま、前をはだけ、立った状態で行われている行為に嫌でも気持ちは盛り上がる。

「は………ぁ、あっ………ああっ」

乱れる呼吸と同じリズムで身体が揺すられる。
突き立てられた楔を中心に甘い痛みを伴う快感が体中に伝わっていく。

「ふ……んんっ、は……」

追い上げられ、逼迫した喘ぎがアデスの耳元で聞こえた。口を閉ざそうとしても堪えられず、くぐもった声が相手を駆り立てる。
挿れられたまま相手のキスで唇をふさがれ、熱く濡れた舌で喘ぎすら絡め取られる。
それに応えるべくアデスの髪をまさぐり、顔の角度を変えて何度も深く求めた。
互いの舌が濡れた音を出し、聞いた者に羞恥を呼び起こさせるような響きが室内に残る。
腰に回された手は、制服の裾をめくり上げるようにして、クルーゼの身体を支えるのと同時に挿入された後口の周囲を擦り、時折ひっかくように繋がった部位に爪を立てる。
指の腹で粘液をこすりつけ、また爪を立てる。
交互に刻まれるその刺激に何度も身体を震わせ、大きく息を呑むクルーゼは、内壁を圧迫する固く猛った男の存在とともに外気に触れた肌にいたずらされるような感覚に懊悩の声をあげた。

「あっ…………んっ……あっ…あっ……くぅ…ん」

クルーゼは、残された片脚で自身の身体を支えていたが、その脚の筋肉は強ばり、これ以上この体位が続けば攣ってしまいそうな痛みを感じてきた。
いくら艦内は低重力とはいえ、長時間片脚を上げた状態はきつい。
もう楽になりたいのだが、身体は刺激に飢えている。追いつめられた状態で得られる快楽ほど、自分を満足させるものはなかった。
より深い結びつきを求めて男の耳元で懇願する。

「アデス……っ、もうっ……や……」

途切れ途切れの言葉だったが、アデスはクルーゼの意を汲んでもう一方の脚も抱え上げた。

「あああっ……!」

窮屈な姿勢から解放されたクルーゼは、今度は先ほどよりも更に奥まで迎え入れることになってしまった男の存在に大きく声を上げた。
アデスもまたクルーゼのきつい締め付けに苦鳴を洩らす。
アデスの両手は、クルーゼの双丘を割り開くようにして彼の体重を支えていた。
端から見れば巨木にすがりつく蝉のような格好だが、幹から伸びた太い枝に貫かれて身体を揺らす姿は、淫猥で艶めかしく、更に男の劣情を煽った。

「一度……出しますよ」

中を濡らして滑りを良くしないと傷つけてしまうと思ったアデスが、そう囁いて腰を揺すると、承知したというようにクルーゼがこくりと頷いた。
先にクルーゼ自身に吐き出させた精液でかなり解してから挿れたはずだったが、それと併せたアデスの先走りの液だけでは十分でなかったらしく、少し動いただけでクルーゼが苦しげに呻く。
尤もそれは、甘い色を含んだものだったが………。
片足を相手に預けた体位よりも、今の方が締め付けは緩むはずなのだが、深く挿入されたせいか、苦しそうに眉を顰めたクルーゼの表情は変わらない。
頬を上気させ、熱い息を吐き、眉を寄せて苦痛に耐える。乾いた唇を自身の舌で時折湿らせる仕草は、無意識なのだろうが、相手を煽っているようにしか見えない。

「アデス……だして……」

子供のように甘えた口調で告げられた途端、アデスの剛直はぐぐっと漲り、クルーゼの願いを叶えた。

「んっ…………」

中に注がれたものに感じたのか、クルーゼの内壁がきゅっとアデスを締め付け、抱きついた腕に力がこもる。繋がった部分から粘着質な音ともに、したたり落ちる白濁した粘液。
アデスは、自身を抜かずに再びクルーゼの身体を責め始めた。
湿らせたクルーゼの中は熱く熟れ、スムーズに男の出入りを赦した。
アデスが抜き差しを繰り返すたびに溢れる粘液がくちゅくちゅと湿った音をたてる。
動きともに空気を抱き込んだ粘液は、時折「ぐぷっ」と奇妙な音をたて、卑猥な音とともに二人の耳を打った。
そんな音にすら感じてしまうようで、互いに相手を激しく求めた。
後ろを責められただけでも十分に張りつめたクルーゼの昂ぶりは二人の身体の間で擦られてもみくちゃにされている。
手が使えないというもどかしさはあったが、慣れない立位に興奮したクルーゼにとっては、突き入れられた男の楔がもたらす快楽に翻弄され、あまり気にならなかった。
それどころではないと言った方が正しいかも知れない。
うっすらと目尻を濡らしたクルーゼは、自ら腰を上下させて内壁を喰らうような刺激を求めた。
アデスもまた突き上げるように腰を揺らしクルーゼを追い上げる。

「あぅ……ん」

甘い呻きが口から洩れるのに気を良くしたアデスが、クルーゼの肩口に顔を埋め、金色の髪が絡む白い首筋から柔らかな耳朶を唇で愛撫する。
頤を仰け反らせ、愛撫を受け入れたクルーゼは、耳の後ろにぞくりとするような痺れを感じ、きつく目を閉じた。

「はっ……は……はあっ……」

荒い二人の呼吸が重なり、それに湿った音が続く。

「……ベッドに………行きませんか?」

乱れた呼吸の中でアデスが告げた。いくら低重力下で、膂力のあるアデスでも、この体位はきつい。何より、クルーゼの身体のことを思えば、柔らかなベッドの上で最後までしてやりたいと思った。

「や…だ………あぅ……っ…!」

このまますぐにもイカせてほしいというクルーゼの願いは聞き入れられず、アデスは乱暴に己を引き抜いた。
ズルリとした感触とともに内壁を擦って出ていった存在に小さな悲鳴を上げたクルーゼは、力を失って床に崩れ落ちそうになる。
その身体をアデスが支えると、先ほど彼の中に放った大量の白濁した粘液が溢れ、クルーゼの内股を伝い落ち、床を汚した。
その感覚に震えたラウが、絶頂の一歩手前でせき止められた情熱のはけ口を求めてアデスの唇を求めた。アデスは、クルーゼを横抱きに抱いて何度も口づけながらベッドまで歩く。
ベッドに身体を降ろすと乱れた髪が白いシーツの上に散った。柔らかなマットに背中を沈めたクルーゼは胸を激しく上下させて喘いでいる。
クルーゼは、言葉もなく目だけでアデスに訴えた。
アデスがクルーゼの脚を開かせてその間に膝を入れると、ベッドがギシリと軋んだ。
仰のいたクルーゼの白い首筋が晒されている。
アデスは身をかがめ鎖骨に口づけを落とし、徐々に喉から頤へと唇で辿る。
唇で触れるたびにクルーゼの身体がある種の緊張と期待とで一瞬竦み、また落胆したかのように弛緩する。その繰り返しに身体を戦慄かせ、吐息を洩らすクルーゼの姿は、アデスの雄をより堅くさせた。

「アデス………焦らすなっ!」

半ば怒ったように言って、脚を振り上げた。
その足首を難なく掴み、身体を引きずり寄せるようにして自身の脚の間にクルーゼの腰を収めてしまう。
振り上げた脚を捉えたまま、踝の内側に口づけ、徐々に上へと辿る。先ほどの立位で凝り固まった筋肉を解すようにやさしくふくら脛を揉みながら膝の内側まで口づける。

「もう……いいからっ!」

羞恥か怒りか判断できなかったが、頬に朱をはしらせてクルーゼが叫ぶ。

「脚、攣ってしまいそうですよ」

やんわりと宥めるように言ったアデスをクルーゼが睨みつけた。
だが、その視線さえも艶に感じてしまい、思わず「逆効果ですよ……」と囁いた。
その言葉に今度こそ本気で怒ったらしく、クルーゼがアデスに手を振り上げたが、足首と膝を押さえられている体勢では手が届かない。

「いい加減にっ……」

目元にうっすら涙を浮かべたクルーゼの顔を見て、アデスは、さすがに苛めすぎたかと少し後悔した。

「すみません……あまりに扇情的で」

我を忘れたと告げたアデスは、ようやく掴んでいた足首を離した。
片脚を肩に担ぐようにして受け止めると、片手でクルーゼの膝を広げさせ、もう一方の手でクルーゼ自身を扱く。
既に勃ち上がったものは、男の手の中で熱く滾り、指の腹で擦られるたびに白い液体を滲ませる。

「あっ……はっあ………くぅ」

同時に指を後庭に滑らせる。
先ほどまでアデスを受け入れていた蕾はやわらかく綻び、更なる刺激を待ち望んでいるかのようにひくついている。入り口に指を這わせ、指先を爪の部分まで入れ遊ばせると、明らかにもっと奥へと導こうとするかのように収縮する。

「今更っ!………指なんてもういいっ………はやくっ」

もっと確かなものが欲しくて、アデスを詰る。終わりを先延ばしにしようとする男の手管に身悶えた。
アデスを求め、手を伸ばす。空を掻いた細い指がクルーゼ自身を煽る男の手に重ねられた。
アデスが苦笑して、クルーゼの指と絡めるようにして屹立を扱き上げる。
濡れた感触が二人の手を汚す。
自身を慰める手の早さが増していき、小刻みに身体が揺れ吐息が荒くなる。クルーゼの絶頂が近いことを知り、彼の腰を掴むと堅く猛った自身を挿入した。

「アアッ!……ンンッ」

腰を揺さぶり一息に奥まで突き入れた。
慣らされた内壁は、男を熱く柔らかく包み込み、クルーゼが呼吸するたびに蠕動し中の熱い雄を締め付ける。閉ざされた内壁のその最奥に何があるのか、暴こうとした男の昴りが抉るように絶妙な角度で抜き差しされた。
内壁の痛痒感は男が出入りすることで摩擦され、よりクルーゼの身体を快感で満たす。

ひっきりなしに洩れる喘ぎと湿った水音。
仰け反る背中がベッドと白い肢体の間に隙間をつくる。
二人が動くたびに波跡を残すようにシーツに皺が寄り、ベッドが軋む。
もはや言葉はなく、時折洩れる苦鳴とも呻きともつかない声が、互いの快感を伝えていた。

「……っく!」

短い呻きと共に吐き出されたクルーゼの熱情が二人の腹を汚すと、甘やかな締め付けに誘われてアデスもまた思いの丈を彼の中に注ぎ込んだ。
最奥を打つ熱い感触に息を呑んだクルーゼの吐息も徐々にか細いものへと変わり、ゆっくりと身体を弛緩させていった。

















「のど……渇いた」

ぐったりと身体をベッドに投げ出したクルーゼがしゃべるのも億劫そうに言う。

「すみません、無理をさせました」

クルーゼの身体を拭い、言われるままペットボトルの水を持ってくる。

「……いい。気にするな、悦かったから……」

掠れた声で囁かれて、アデスがどきりとした。
ペットボトルを傾け、自ら口に含んだ水をクルーゼに口移しで与える。嚥下する喉の動きにすら艶を感じて、アデスが狼狽える。
これ以上の刺激はまずい。
アデスの我慢が利かなくなる前にクルーゼに眠ってもらわなくては、議長来襲の騒動で寝不足の彼にもっと非道いことをしてしまいそうだった。

「隊長、起きられるようになったらシャワー浴びた方が……」

「お前……この状態でフロなど入れるか!?」

半ば呆れたように、誰のせいだと言わんばかりにクルーゼが言う。返す言葉もないアデスを手招きで呼んだ。
ベッドの上で上半身を起こし、アデスの首にするりと腕を巻き付ける。



「もちろん、一人で入れなんて言わないだろうな?」


顔を覗き込み、ここぞとばかりに駄目押しする。


「どう……なっても知りませんよ」


「どうにでもしていいぞ?」


まだ余裕があると見せつけるクルーゼは蠱惑的な微笑をアデスに向けた。
















END
2006.02.12 『吐息と甘いささやき【裏】』








(本文)―――っていうような二人の情事を偶然、レイが目撃してしまったらどうなるんだろう……とか思ったり………。または、隊長とレイが同じ艦に同乗していて、隊長とアデスとの情事があったら、別室にいるレイちゃんは、キュピーン!と何か感じちゃったりするんだろうか(まさにその状況ですが)。もし、ラウが感じている感覚をリアルに体感してしまったら………。なんか……やらしいな(汗)。
自分で書くには、レイちゃんは未成年なので、基本的にアレコレ致せない……というかそういう気分にならないので、間接的な「なんちゃってH」だったら自分をだませるような気がしてきました(笑)。本当は、本編で「レイちゃん衝撃の情事目撃譚」について書こうとしていました。ラウが気持ちよさそうな顔をしてるのを見て、自分もしてみたい! と思ったら、そのフォローはギルがするんだろうかと思い………いや、ギルにさせてる話を自分が書かなきゃいけないんじゃないかと思って、最後の一歩を踏み出せませんでした(涙)。なので、アデクル二人と同時進行でレイがどうにかなっちゃっていて、ギルが介抱(?)しているお話は、各自の脳内で進行させてください。
最近、おまけ本はエロ本(汗)……というのが恒例化してきています(笑)。ああっ……そこのお嬢さん退かないで! と心の中で願いつつ―――。しかし……隊長ってばアデス相手だといろんな意味でおんなのこ並みです(汗)。いろいろ男性の生理的にありえん!! とは思いながら、同人だからいっか…と一人で妥協(逃げ)しています。