第一種接近遭遇【裏】






上官を官舎に送り届けて、そのまま例の如く送り狼(注・不可抗力)になってしまったアデスは、クルーゼに翻弄されていた。
正確には、押し倒したのはクルーゼで、押し倒されたのがアデスなのだが、そんなことはもはやどうでもよいことだった。やることはしっかりやるのが、デキる男というものだからだ。



「腰をもう少し上げて…そうです」
ぐちゅりと音がして、クルーゼの中にアデスの雄が突き入れられた。
仰向けになったアデスの上に跨り、男を自ら迎え入れようとしたクルーゼの身体が震えた。

「ア……んんっ」

クルーゼの口から悲鳴のような、感極まった声が洩れ、途中まで挿入されたままでクルーゼの動きが止まってしまった。
いつもなら貪欲に雄を呑みこむクルーゼの後庭は、ひくりと引き攣れたように閉ざされ、彼の表情はどこか辛そうだ。

「く…っ、あまり無理を……しないでください」

きつい締め付けに顔を顰め、前戯が足りなかったかとアデスは後悔した。
アデスの引き締まった腹の上に手をついて、身体を支えるクルーゼは浅く息を継いでいる。
いつになく開かない己の身体に戸惑っているようでもあった。

「ふ…っ……く…」

時折洩れる声は、苦鳴に近い。
自分で動こうとして、身体がついていかず、痛みに耐える声をアデスは聞き逃すことはできなかった。

「隊長…今日はもう……やめましょう」

「そんなこと……今更…できるかっ…」

どうやら自分で誘った手前、意地になっているようだ。
最終的に得られるのは快楽だとしても、そこに至るまでの痛みは、受け入れたことのないアデスにはわからない。
これまで自分の腹の上で悶えるクルーゼの姿を何度となく見てきたが、今日の彼はどうもいつもと勝手が違う。
痛みと共に感じるはずの快楽がなく、苦痛だけを敏感に感じ取ってしまっているように思える。

(議長の薬のせいか…?)

誘淫剤の類を盛られたなら逆の効果が現れるはずだから、クルーゼのこの反応は違うのかもしれない。
だが、心当たりと言ったらそれくらいしか思いつかない。
これ以上は無理だと判断したアデスは、クルーゼの双丘を割り広げるようにして持ち上げると堅い楔を抜き去った。

「あぅっ…ん」

短い悲鳴とともにクルーゼの身体がびくりと跳ね、すぐに力を失って倒れこむ。
その身体を抱き取って、アデスが幼子を宥めるように優しく背中を撫でた。
荒い息を吐くクルーゼはアデスの胸に頬を押し付けたまま、呟く。

「…すまん」

あまりに申し訳なさそうに言うクルーゼがなんとも愛おしい。

「いえ……体が本調子でないのでしょう」

慰めるように言いながらアデスの手がクルーゼの髪を梳くようにして撫でる。
その感触が心地よいのか、クルーゼは目を閉じてアデスの心音を聞きながら、呼吸を整える。

「アデス…」

「はい?」

名を呼んで、仰向けになったままのアデスにそのまま口付けた。
歯列を割り、舌を絡め合う深い口付けを繰り返す。
しばらく互いの唇を貪った後、膠接音を残して唇が離れた。
その時、キスに夢中になっていたアデスは、クルーゼの次の行動を阻むことができなかった。

「…隊長っ!?」

「このままじゃ、終われないだろう?」

きゅっと掴んだアデスの雄をクルーゼが、絶妙な手技で愛撫し、あろうことか身をかがめて口を近づけたのだ。
クルーゼ隊の旗艦を預かる艦長として、連合の大部隊を相手にしてもこれほど慌てたことはないだろう。

「駄目です!」

自分がするのはいいが、クルーゼにしてもらうなんて、そんな罰当たりなことできない―――と心に誓っていたアデスは、それこそ必死で逃げようとするが、肝心な部分を押さえられているので、無駄な抵抗でしかなかった。

温かい濡れた感触に包まれ、ぞくりと背筋に震えが走る。
濡れた音をたてて舌を這わせるクルーゼの姿は、視覚的にキた。
見てはいけないものを見てしまったような、けれど見たい。これほどの誘惑に勝てる男はいないだろう。
そして、孤高の人が自分の足の間に跪き、奉仕する姿に、身体の奥深くに眠っていた感覚が呼び起こされる。
背徳的な悦びが身体を満たし、急速に熱が下肢に集中する。
そして、それは唐突に弾けた。

「あ……?」

アデス自身も驚いたが、クルーゼもまた吃驚したような顔をしていた。
流石に最後の理性でイクときの声が洩れるのだけは堪えることができたが、身体の反応は正直なもので、理性が復旧するのを待たずに先走ってしまった。
クルーゼの頬から白濁した液体が滴る。
それは、緩やかなウェーブを描く金髪にも飛び散り、ほんのりとピンクに染まったクルーゼの身体を白い斑点のような染みをつくっていた。
対照的に青くなったのは、アデスだ。

「も……っ、申し訳ありませんっ!!」

慌ててシーツを剥ぎ取り、唖然としたままのクルーゼの頬を乱暴に拭う。
身体の下に敷いてあったはずの真っ白なシーツは、半ばもみくちゃになり、乾いた布に擦られて、クルーゼが声を上げる。

「こら…っ、やめ……もういいから…アデス!……いたっ」

パニックになりかかっていたアデスだったか、「痛い」の一言で我に返った。

「す、すみません……」

消え入るような言葉を呟いて青くなったり赤くなったりするアデスにクルーゼが苦笑する。

「ま、これであいこだと思えばよいではないか」

「は……?」

「まあ…多少……早かった、かな?―――とは思うが、私もまだまだいけるな」

「多少」どころでなかったアデスは、もう真っ赤になって反論できない。
しかも妙なところで自信を取り戻してしまった上官になんと言えばいいのかわからない。
いつの間にか機嫌が直ってしまったクルーゼにアデスは、泣きたくなってしまった。

「そんな顔をするな。たまにはいいだろう?―――それとも、悦くなかったのか?」

苦笑したクルーゼが、アデスの目の前に顔を近づけた。
鼻先が掠めるくらいまで顔を寄せて、相手の瞳に自分が映っているのを確認する。
言い逃れを許さないかのように、じっと見つめられてアデスは真っ赤になってしまった。

「いえっ、そんな…とんでもありません!………
き、気持ちよかった…です

最後の消え入るような一言を耳にして、クルーゼがしてやったりと微笑んだ。



ベッドの上でも主導権を握られたまま終わるのを情けなく思ったアデスは、意を決して、クルーゼを抱き上げた。
軽く目を瞠ったクルーゼだったが、何も言わずアデスの好きなようにさせてやる。

連れて行かれた先は浴室だった。
アデスは、シャワーのコックをひねり、温かい湯をクルーゼの身体に掛ける。
精液で汚れた身体を洗い流そうということらしい。

確かに身体がべたついて気持ち悪かったので、続きをするにしても止めるにしても、ちょうどよかった。
アデスの大きな手がクルーゼの身体をくまなく洗い上げる。
ソープで滑った手が、敏感な部分を掠めるたび、耳の後ろがぞくぞくするような快感が湧きあがる。

立ったままのクルーゼの足元に片膝をつくと、自分の腿の上にクルーゼの片足を乗せる。
ひたすら無言でクルーゼの脹脛から腿の裏を撫でるようにして洗うアデスに、声をかけた。

「ひょっとして、詫びのつもりか?」

その言葉にアデスの指が足の付け根の奥まったところに伸ばされた。

「ふ……」

閉ざされた門に触れ、擦り上げる。
ボディソープの泡が背骨のくぼみを伝わり落ち、クルーゼの後庭を浸す。
その滑りに助けられてアデスの中指が門を開こうと突き入れられた。

「あ…ふ」

思わず声を上げてしまったクルーゼは、アデスの指を受け入れやすくするために、足を開く。
それでも立ったままの姿勢は辛い。
指は徐々に動きを激しくして、クルーゼの中を掻き乱す。
薬指が追加され、二本の指が門をこじ開けるように広げられた。

「あっ…ン」

もどかしいような感触に、アデスの肩に手を伸ばしたクルーゼは、バランスを保とうと背中を冷たいタイルに押し当て、崩れ落ちそうな身体を支えた。

人差し指までがスムーズに出入りを繰り返すようになってから、アデスがようやく口を開く。

「だいぶ…ほぐれたようですね」

「もう…いいから……」

「ここで?―――それともベッドへ?」

「…ここでいい」

熱い溜息とともに囁かれて、アデスはゆっくりと指を引き抜く。
くちゅりと粘液が糸を引くように指が離れていった。
その感触にも身震いしたクルーゼが立っていられず、床に膝をつく。
そのまま四つ這いになり腰を高く上げた。
アデスは、膝立ちになり、クルーゼのひくつく後庭に自身を押し当てゆっくりと突き入れた。

「あっ…ああ……あ……あ」

先程、自分で入れようとしてもどうしても入らなかったアデスの雄が少しずつ、着実にクルーゼの内側を喰らい始めた。
待ちわびたものでようやく満たされたクルーゼは、どっしりとした重みと存在感が奥まで届いているのを感じ、安堵の溜息を洩らす。尤もそれは溜息というよりも、聞いた者に春情を催させる懊悩の声だった。
アデスも内側から沸き起こる愉悦のざわめきに背筋を震わせた。
そのせいか急激に大きくなったアデスの昂ぶりは、よりクルーゼを苦しめ、悦ばせることになった。

「ふ……あン、や……おっき…い」

自ら腰を揺すりだしたクルーゼに呼応するかのようにアデスが突き上げを激しくする。
クルーゼは、己の最奥の内壁に当たる剛直があまりに激しいので身体が壊れてしまうような感覚に陥った。

「アデスっ!…や、壊れるっ……!」

「くっ…」

クルーゼの腰を掴み、思うさま自身の腰を打ち付ける。

「あんっあんっ…あぅ……」

ひっきりなしに洩れる喘ぎは普段の強気で不敵なザフトきっての智将とは思えない。
だが、セックスの時にこんなに可愛いらしく喘がれると、男としてはかなり気分がいいのは確かだ。
それが、ザフトの英雄だということを抜きにしても――――。

「もう…っ」

急に内壁の締め付けが増す。
クルーゼの身体が断続的に激しく痙攣しシャワーの湯で濡れた床に白濁した液体がぶちまけられた。
後ろだけで感じてしまい、前も達してしまったクルーゼの内壁に誘われるようにして、アデスもまた思いの丈を注ぎ込んだ。





   ◇




目が覚めたアデスは、なぜか制服を着たまま上官の部屋のソファに寝転んでいた。
議会ビルからクルーゼを官舎に送り届けて、そのまま眠り込んでしまったらしい。
ベッドを見ると、気持ちよさそうに寝息をたてるクルーゼの姿が目に入った。

(………?)

首を捻った。どうも記憶が曖昧で、どうして自分がソファで居眠りをしていたのか前後が思い出せない。
しかも、かなり、いや、とてつもなく、イイ夢を見ていたような気がする。

(欲求不満…だろうか?)

夢の内容を断片的に思い出し赤面する。
しかも身体は正直で、きっちり反応しているから始末に終えない。
それもこれも、現実にはあり得ないくらい可愛らしく喘ぐ夢の中のクルーゼの痴態が脳裏に焼きついてしまったからだ。とにかく手遅れになる前にトイレを借りようかと席を立つ。

そのとき、洗面所の床に置かれた籠が目に入った。どうやら洗濯籠のようだが、中に入っていたものを見て、どきりとした。

丸めて突っ込まれたシーツの塊だ。

思わずクルーゼの眠るベッドのシーツと交互に見比べてしまった。

「まさか…な」

アデスは小さく呟く。

個室に籠もり一人寂しく昂りを鎮めながらますます首を捻る。

(一体……どこからが夢だったんだ?)


アデスはしばらくの間、悶々と悩むことになった。










2005.10.10



クイズ
「さて、どこからがアデスの夢でしょう?」

うっ…………ぎゃあああああああ!!!
このエロ本は、あでくる。11「第一種接近遭遇」のおまけ本として配布したものですが!
いやはやさてさて…………(汗)。


夢オチです。お粗末様でした(笑)。どこからが夢でどこからが現実だったのか定かでありません。途中までは至極真っ当に(ちょろっと)濡れ場を書こうだなんて思っていましたが、途中から大暴走です。この隊長はきっとニセモノです(笑)。
なので、このおまけ本は、「どに大暴走」という副題がつきます。隊長のお初がいっぱいです。(ぎゃあああ@@)
つい先日、友人がパンピーなお嬢さんに「カップリングの受・攻って、押し倒される方と押し倒す方、っていう考え方でいいんですか?」と訊かれ、答えに窮したそうです。そりゃ…押し倒される攻もいるので、一概にそうとは言いきれないですよね(にっこり)。「『誘い受』の説明がどうしてもできなかった」と語る友人の気持ちはよくわかります(笑)。専門用語すぎです。(…でも、普通の真っ当に生きているお嬢さんが「受」とか「攻」とかという用語を知っているあたり、どうよ?)
世の中には『襲い受』という区分もありそうですが…うちの隊長はどっちでしょう?