■誤算■





ヴェサリウスの艦長室。
薄暗く照明が落とされた室内。艦長の執務机の上には、鈍い光を放つ仮面が置かれ、椅子の背もたれに無造作に掛けられているのは部屋の主の黒い制服ではなく、白い制服の上着だった。


◇ ◇ ◇


男の身体の下で洩れる悩ましい声。

繋げた身体は、熱く濡れていて、男の心を掻き乱す。
きつい締め付けに耐え切れず、男は彼の中に精を吐き出した。

昂ぶりは収まらず、繋げたまま軽く揺すると濡れた水音とともに断続的な喘ぎが聞こえる。
その声に気を良くして男のものは大きくなり、そして、一層剛直を増す。
その大きさに耐えかねて、彼はまたくぐもった声を洩らす。

繋がったまま仰向けにされた彼は、苦痛と羞恥のためか、手の甲で目元を隠すようにして、浅く息を継ぐ。
男の動きが再開された。彼の悦いところを掠めるように抜き差しされる。
先ほどの吐精で滑りが良くなった彼の中は、男のものを拒むことなく受け入れる。
いや、逆に誘うかのように収縮を繰り返した。

こぼれる白いぬめり。
そして、熱い吐息。

いつしか吐息は熱く濡れた声へと変わっていた。



「アデス…っ」

吐息の合間に自分を呼ぶ声にアデスの背筋はぞくぞくと震えた。

アデスの雄を飲み込んだまま体位を変えられ、クルーゼはアデスの上に馬乗りになった。
薄く開いた唇。
乱れた前髪が揺れるたびにアデスを見つめる潤んだ瞳が覗く。

アデスは、クルーゼの素顔を下から眺めて、その壮絶なまでの色香に翻弄された。
肉体的な快感もさることながら、視覚や聴覚に訴える彼の媚態はアデスをより昂ぶらせた。

彼の細い腰を押さえつけ、自分の動きに連動させようと上下に動かす。
繋がった部分からは、絶えず湿った水音がした。
アデスは、彼の身体をぬるりと持ち上げては、ぐちゅりと落とした。
持ち上げては落とす。それを繰り返した。
そのたびに洩れる苦鳴。いや、悦楽の悦びに満ちた声。

アデスは、自分の腰の突き上げと同時に彼を上から落とすようにして、結びつきをいっそう深くした。
彼の口からは、喘ぎとも悲鳴ともつかない言葉が発せられた。

彼の吐き出した白濁した液体がアデスの腹を何度となく汚し、アデスもまた彼の中に注ぎ込む。

お互い体力がある分、交わりは長く深いものとなった。




◇ ◇ ◇

声を殺そうとすればするほど、快感に耐えられなくなる。
時間が限られたこの身体は、浅ましいほど他人の熱を求める。
先が望めないからこそ一時の快楽に溺れるのか。

刹那の夢でもいい。
昇りつめたあの一瞬だけは、全てを忘れることのできた。
この行為は、今の自分にとっては必要なことだ。


もう少し。
あと少し・・・狂わないでいられるから。


ただひとつの誤算は、行為から得られる快楽以上のものを知ってしまったこと。




――――この男の腕の温かさを知ってしまったこと。










『誤算』2004.3.21



「あでくる。5」に収録したSSです。
いや、ただセリフを入れずにエロを書きたかっただけなんですが、誰と誰の絡みなのかわかんなくなったので、一言だけセリフを入れました。
なんか、隊長が他人と身体を繋ぐ理由ってなんだろうと考えていたらこんな感じになったような覚えが……。
どこからが打算でどこからが本気かわからなくなってしまったというところが隊長の「誤算」でしょうか。