別冊「あでくる。2」

やさしさの意味【裏】








始めは、冷たかった唇が徐々に熱を帯びる。

舌を絡め、唇を思う存分味わう。
私の頬を包む手が温かくなった頃、彼の腰を抱き寄せていた腕を緩めた。

それを合図に彼の唇が私から離れる。
彼は、細く糸を引く唾液を手で切って、唇を舐める。
私の愛撫で紅く染まった唇は、艶やかで、なんとも言えぬ色気を感じる。

「奥方には申し訳ないが……欲しい」

この人が、こんなにはっきり私を求めるのは初めてだ。
今日は、初めてのことだらけで驚いてばかりいる。
しかし、彼の体調を考えると、とても最後まで抱く気にはなれなかった。

「……駄目です。今まで、具合が悪くて倒れていたのは、どなたですか!?」

先程の口付けで気分的には、盛り上がってしまったのだが、
このまま抱けば、今度こそ間違いなく軍医を呼ばなくてはならない。

「アデス―――気持ちが悪いんだ」

「だったら尚更です!」

「違う。……あの男の…跡が……」

みなまで言う前に察した。彼の苦渋に満ちた声を聞けば、断れない。

「………わかりました。また倒れたら、今度は抱き上げて、堂々と庁舎正面エントランスから、官舎までお送りしますよ。何事かとみんな振り返るでしょうね」

ため息ひとつ。すこし、からかい口調で話すと、彼は困ったように笑った。

「―――わかった。倒れないように努力しよう。……だが、お前次第なんじゃないか?」

―――それもそうだ。



軍服の襟元をくつろげると、鎖骨の上に朱い跡がひとつ。
その上から強く口付けると、鬱血がひどくなった。
彼の身体を傷つけているようで非常に不本意だったが、それが彼の望みなのだから仕方ない。
首筋から胸元にかけていくつも散らばる朱い跡を一つずつ濃くしていった。
私は、床に座り込んだまま、背を壁で支えて、脚の間に膝立ちになった隊長の胸の突起を唇で愛撫していた。
彼の身体が逃げないように腰を自分に引き寄せて。

「は……っ」

荒くなる呼吸。彼の手は、もどかしいように私の髪をまさぐっている。

「アデス…焦らすな。あまり保たんぞ」

「そうでしたね」

彼の催促で、名残惜しかったが胸元の愛撫から撤退した。そのまま、空いている手で、軍服のズボンのファスナーを開け、唇で臍の辺りにキスをする。

「濡らさなくて大丈夫でしょうか?」

「たぶん……」 

彼は、そう答えたが、できるだけ身体に負担を掛けたくなかった。
私が、自分で指を濡らそうかと、手を口元に持っていくと、

「私がやる」

驚く暇もなく、私の手を取り、彼は自分の口元へ持っていく。
そのまま私の指を舐め始めた。
始めは、一本。そして二本。時折口腔内に指を入れ、指の根元を甘噛みする。
私は、誘われるように、彼の口腔内で指を蠢かす。
頬の裏の粘膜、熱く熟れた舌、とがった犬歯にも戯れるように触れる。
私の指を一生懸命舐め上げる隊長の姿は、はっきり言って、かなり視覚的にくるものがあった。

「隊長……もう、結構です」

私の理性の糸が切れる前に控えめに申し出た。

「…ン」

口に指を含んだままの返事が、鼻にかかったようで、妙に甘く聞こえる。
隊長の口から指を取り戻すと、そのまま彼の後庭に滑り込ませる。

「は………っ」

入れた瞬間、彼が息を詰める。
だが、すぐに力を抜いて、私の肩に身体をもたれかけた。
指を奥へ進めると、ぎゅっと私の頭を抱え込むように抱きしめる。ゆるく動かしながら進める。

「ンン……」

快感を堪えるようなくぐもった喘ぎ。
ほとんど慣らさずに私の指は根元まで入ってしまった。
そして、彼の唾液以外の濡れた感触。先程の情事の名残らしいものが、溢れ出す。
その白濁した粘液を掻き出すように指を曲げる。
私は、彼の中に残る液体をすべて取り除こうと、自棄になって指を動かした。
それは、ほとんど愛撫と変わらないわけで、彼の唇からは、ひっきりなしに声が漏れる。

「ああ…っあ……ンンッ…や…」

指を増やして、彼の中を更にかき回す。
抜き差しを繰り返すうちに、彼の前のものが限界にきたようだ。
私は、軍服のポケットからハンカチを取り出し、彼のものを包むようにして扱いてやる。
前と後ろを同時に嬲られて、感極まった声が部屋に響く。
さすが、ザフト軍本部の会議室。音が外に漏れる心配は全くない。
それにしても、こんなに彼が乱れるとは予想していなかった。
体力があまり残っていないせいで、いつもなら堪えることができる媚態を堪えられなくなったということだろうか。
まあ、見たことのない彼の姿を見られたので、役得といえば役得か。

「アデスッ……だめだっ」

彼の膝ががくがくと震える。
自分の身体を支えられなくなって、私に身体を預ける彼が、耳元で短い叫びをあげて果てた。



崩れ落ちた隊長の身体を抱きとめて、後始末をする。
後でトイレにでも行って、自分の後始末もしなければ、と思いながら、隊長の顔を覗き込む。
案の定、気を失っている。

「隊長、初夜の花嫁みたいに抱き上げて運びますよ」

その声が聞こえたかどうか分からないが、彼が目を覚ます。

「……それは遠慮しておこう」

眉をひそめて真顔で答える彼の姿に、つい笑みがこぼれてしまった。









この本は、あでくる。2「やさしさの意味」のおまけ本として配布した裏本です。本編小説の続きになっていますが、どにとしては、ありえない展開になっています。するかしないか迷ったあげく、アデスは、病人相手にできる男じゃないなと思って、本編に入れるのやめました。でも、欲求不満になりそうだったので、おまけ本として配布しました。
この本、(本編とおまけ本)手元に完本が残っていないので、どんな紙を使ってどんな装丁にしたのか覚えていません。データは残っていたんですが………おかげでこんな話を書いたことを忘れていました。
更に、この作品に加筆修正したものが、あでくる。4「やさしさの意味と偽りの理由」になりました。「あでくる。再録集」CDーRに収録しています。

積極的な隊長を書きたかったので(笑)。
アデスの無骨な指をくわえる隊長………うおーっ視覚的にたまらん!という妄想の元に書き上がりました。