+ 手段 +







「髪のびましたね」

「そうか?」




無重力に揺れる金糸

ふわふわと

ゆらゆらと



彼の動きに合わせて揺れる
白い肩をすべる金色の髪




私が指で髪を梳くたびに
彼は心地よさそうな表情をする

それがいとしくて
髪をもてあそぶ手を止められない

彼はそれを咎めるわけでもなく
私のしたいようにさせてくれる



「伸びすぎたか」

「いえ」

「見ていて鬱陶しいようだったら、少し切るか」

「そんな!もったいない!」

「・・・なんだそれは。こんなもの、ほっといてもまた伸びる」

「そうではなくて。やはりお似合いですから」

「・・・そうか?」

「ええ」

「ふむ。そう言われて悪い気はしないな」

「そうでしょう」

「にしても、毛先が痛むから少し切りたいのだが。お前やってくれないか?」

「えっ!そんな、自分には無理ですよ!!」

「揃える程度でいい」

「それが素人には難しいんです!」

「そんなものか?」

「そんなものです」











他愛のない会話が心地よくて
つい、ここが戦場だということを忘れがちだ


彼が髪を伸ばす理由
それを聞いたりはしないけれど


きれいだとか、似合うとかそんな感傷的な理由ではなく
彼にとっては、ただ、必要だっただけ





手段の一つに過ぎない





彼の絶望と孤独が刻まれた素顔を隠すための―――










2004.0502 「手段」