支配の証 〜序章〜 大きな寝台の紗幕が揺れる。 ベッドに横たわる白い身体を思うまま蹂躙して、男は満足げに息を吐いた。 彼が皇帝に呼ばれて帰ってきた日はいつもそうだ。火照った身体と乱れた心を持てあました青年に呼びつけられて、彼を抱く。 身体の中に別の男の痕跡を残したまま、男の前で足を広げる。 その卑猥さ、その痛ましさに男は抗う言葉を持たず、ただ、求められるままに身体を繋げ、互いの熱情を交わす。 いつも荒々しく、乱暴にされることを望み、やさしくされることを嫌がった。 だが―――と男は思う。 自暴自棄とも言えるこの姿を見たら、つい優しく慰めてやりたいと思うほど、彼は自分を貶める。 まるで、汚辱と苦痛の中から何かを得ようとするかのように。 堪えきれなかった小さな喘ぎが、時折洩れ、それが男にとっての唯一の救いとなっていた。 ただ、身体を痛めつけているわけではない。ちゃんと相手が感じていることに、なぜか安堵した。 普通は、臣下が手を触れることも叶わぬ至尊の肉体をただの快楽のためとは到底思えぬ行為に晒すのは、彼が望んだこと。男は、その望みに応えるだけ。 それ以外の言葉はいらない。 ―――なぜ? どうして? そんな理由はいらない。 ―――なんのために? 目的も必要ない。ただ、欲しいと願って、それに応えられる者がいたのだから。 「相手は何人です?」 「知らない。……ずっと……目隠しされている…から」 「こんなに溢れてきていますよ」 「……ふっ……」 男が指で入り口を擦るように刺激し、中をまさぐるようにして窄みを広げると、ドロリと洩れ出すのは白濁した粘液だ。一体、何人の男の精を注ぎ込まれたのか知らないが、そのままにしていたらひどいことになるだろう。 彼を抱く過程には、こうした後始末が含まれていることが多い。 よほど、その部屋にいたくなかったのか、行為が終わってすぐに帰らねばならなかったのか知らないが、後始末をする間もなく、自分の宮に戻ってきて、すぐに男を呼ぶのだ。 洩れ出す感触に彼の背筋が震え、同時に男が指を中に潜り込ませた。緩んだ蕾は難なく指を受け入れ、収縮を繰り返す。その先を促すように……。 前の男達の放ったものが潤滑剤の代わりになって、再び男が侵入するのを容易くしている。それでも、挿入時の締まりがきついのは仕方がない。 「ああっ……!」 思わず声が洩れるが、すぐに甘い吐息に変わる。いやらしい水音を立てて何度も抜き差しを繰り返した。ぬるりと入れては、ずるりと出す。それを何度も。 その度に、強ばるように快感を訴える両脚が男の腰に巻き付く。そうした媚態も、別の男に教えられたのだろうか。 「そんなに……締め付けないでください」 男が低い声で囁く。 明日は、彼の二十回目の誕生日だ。 夜には、弟妹達や祝い客らが集まり盛大な夜会が催されるはずだ。彼はきっといつもと変わらぬそつのない笑顔で、夜会をこなすだろう。 前の晩に何人もの男を銜え込んだとは思わせない姿で。 一体、いつからこんなことを繰り返しているのか……と思うと、男の胸は重くなる。 戒められていた痕が残る手首を男はちらりと見た。 皇帝の意を受けた側近達から、意に添わぬ陵辱をその身に受けてまで、彼は何をしようとしているのか。 父親が息子にする行為では決してない。 歪んだ親子の愛情? ―――いや、これは狂った王者の支配欲、執着だ。 「どこがイイのか……教えてください」 わざと彼を煽るような言葉を掛け、最奥を突く。そのまま身体を揺するようにして内壁を擦り上げた。 「あっ………はぁ………くぅ……ん!」 言葉にならない荒い呼吸の中、一際、大きく声が上がった場所を執拗に責めた。 「ああ……ここですか、ここが悦さそうだな」 彼の朱に染まった目尻には生理的な涙が浮かび、男が与える快楽をすべて飲み込もうとしていた。 皇帝以外の男の前では決して膝を屈しない人物が、臣下である自分の下で喘ぐ姿に男としての本能的な征服欲が満たされる。 自分は、そういう浅ましい人間なのだ。男は、自嘲気味に唇を歪めた。 「早くっ……ダー……ルトン!」 その言葉が引き金になって、男が自らを解放すると、同時に小さな悲鳴が上がり、飛沫のような白い粘液が互いの身体を汚した。 彼もまた達したのを見届けたダールトンは、荒い呼吸を続ける彼の頬をやさしく撫でて、涙を拭ってやった。 そして、耳元に唇を寄せて、やさしく囁いた。 「はしたないですな、シュナイゼル殿下」 彼―――神聖ブリタニア帝国第二皇子シュナイゼルは、その言葉に隠微に微笑した。 End ※ダールトン追悼小説より再掲。 これ、一期終了後に書いたので、相手がダールトンですが、R2見た後だったら間違いなくワン相手だと思うので、適当に変換してください。ワンシュナのエロがよみたいなぁ。 |