3 無事に戻ってきたロイドが、報告も兼ねて上司の執務室にやってきた。 自発的というより、セシルに無理矢理連行されてここまでやって来たようなものだ。手には、何やら包みを大事そうに抱えている。 「少しも頭の良くない愚か者でしたけど」 ロイドはシュナイゼルの顔を見るなり、口をとがらせて抗議する。 「やれやれ、私を巻き込んでおいて、それを言うのかい?……君は」 呆れた口調のシュナイゼルが髪を掻き上げた。確かにロイドにそう忠告したのは自分だが、釣れたのが小物過ぎて拍子抜けした感が否めない。 「いずれにせよ、頭が悪い相手でよかったな。でなければ、無事に帰れたかどうか分からないよ。君の好物もね」 シュナイゼルがロイドの抱える袋を指差した。 中身は、ロイドが必死に守り抜いた(?)「なめらかとろ〜りプリン」4個だ。 1個減っているのは、ここまで来る車中でロイドが食べてしまったからだ。 安堵した様子で微笑むシュナイゼルは、どうやら一応、万が一の場合も考えていたようだ。 ロイドがあの侯爵の屋敷を出ると、ちょうどセシルがランスロットのトレーラーごと現れた。もちろん、デバイサーも一緒にだ。どうやら屋敷にナイトメアで乗り込むつもりだったらしい。 ランスロットを許可無く動かしたら軍規違反だが、きちんと上の諒解は得ているという。 上というのは、もちろんシュナイゼルのことだったが……。 これ以上のお墨付きはないだろう。 何でも、軍事機密漏洩の可能性があるので、関係者の逃亡を阻止しろとのご命令だったらしい。 確かにナイトメア最新鋭機の機密が漏れたら重大事件だ。 だが、少し大げさではなかろうか……と思ったのはセシルだが、相手が相手なので理性ある沈黙を保った。 シュナイゼルを巻き込む必要は全く無かったのだが、反省とは無縁の男――――ロイドにとって、穏便に(さっさと)済ませるには一番あれが“楽な方法”だったのだ。 愚か者の相手をシュナイゼルが引き受けてくれたおかげで、ロイドは無事プリンと共に帰還できた。本来なら第二皇子がこんなことまでする必要はないのだが、ロイドの上司は確かにシュナイゼルということになっている。間の官職をいくつかすっ飛ばしてはいるが……。 「だって、貴方が僕の上司ですから、別に間違ってないと思いますけど」 ロイドが歩み寄りシュナイゼルの皇族服の襟を掴むと、お詫びのつもりなのか、背伸びをして頬にキスをした。 少し身を屈めるようにしてキスを受けたシュナイゼルが、くすぐったそうに笑う。 「部下が上司にこんなことするのかい?」 「お互い様でしょ。……それともお礼はプリンの方がいいですか?」 「それは、遠慮しておこう……」 背伸びしたままのロイドの腰を抱き寄せて、今度はシュナイゼルから口づけた。 「ああ、そうだ。殿下、言い忘れてましたけど、ゲフィオンディスターバー対策、何とかなるかも知れませんよ」 ロイドが本日2つ目のプリンを賞味しながら、思い出したように言った。 「ああ、例のあれかい? 式根島で君のランスロットがやられた……」 「失礼な!やられてませんよ、ちょっと油断しただけです」 「わかった、わかった。で、そのサクラダイトの活動阻害力場発生装置対策ができたのか?」 「ええ、スザク君の学校でとっても面白い子に会ったんです〜v」 主の前でスプーンを銜えるロイドは、上機嫌だ。 「学生が発案者か……すごいね」 食べながら喋ったせいか、口元にプリンのカケラをくっつけた29歳の口元をシュナイゼルの指が拭う。そのままそのカケラを口に入れる。自分の子供で慣れているのか、そういう仕草も全く違和感ない。 尤も、第2皇子が自分の子供の食べ汚しを拭って、さらにそれを口に入れるなんてこと、あるのだろうか。意外な一面だ。 拭ってもらった方も全く動じていないようだ。 「んふふ、世界のエネルギー分布が変わっちゃうかも知れませんよ〜v」 楽しそうに語るロイドの言葉にシュナイゼルの瞳の色が変わる。 「ふうん? 詳しく聞きたいな、ロイド?」 穏やかな微笑に秘められた、明日への策謀。 ロイドが、主の意を得て、にっこりと笑った。 特派が第二皇子直属の機関である理由。 それは、帝国宰相という地位にいて、内政と外交を司る男の権力を裏付けるためのものだ。 技術部という一見地味な部署の存在が、後のエネルギー戦略にまで影響を及ぼそうとしていることを知るのは、今はまだ二人だけしかいない―――――。 ◇ そして、数ヶ月後、神聖ブリタニア帝国軍によるオーストラリア大陸への侵攻が始まった。 それが、人類最悪の兵器の誕生を促すことになるとは知らずに―――――。 end 2007/03/27 ウラン最大産出国がオーストラリアだそうです。 ニーナの発明によってエネルギー革命が起こるかも知れません。 サクラダイトから原子力への……。 また戦争が起きますね、たぶん。 子供の食べこぼしを拭って自分で食べちゃうパパに萌える。 殿下には3歳の娘がいたりするといいなv さぞ、可愛かろう……v back |